先日、渋谷の明治通りで偶然見つけた 神宮通公演トイレ<あまやどり>
に感動したことをきっかけに、いろいろ調べて知りました。
「THE TOKYO TOILET」は日本財団と渋谷区等がすすめるプロジェクト。
これまで「暗い・汚い」と敬遠されていた公共トイレをクリエイティブの
力によって変えていく取り組み。ユニークな発想と、素晴らしい挑戦です。
都内渋谷区17ヶ所の公共トイレが、著名なクリエーターによりデザイン
され、すでに現時点で7ヶ所が完成し、実際に使用できる状態ようです。
すでに配信されている多くののレポートや動画がネット上にありましたが
自らの目で、この7ヶ所全て巡って、見てみようと思い立ちました。
プロジェクトに関わる方々へのリスペクトとともに、いち使用者の目線で
考えてみたレポートです。失礼がありましたら、どうかご容赦のほど。
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□神宮通公演トイレ<あまやどり> 安藤忠雄
男子WC 小便器:2 大便器:1
女子WC 大便器:1
だれでもWC 大便器:1
衛生を保つ通気性・防犯効果にもなる解放性・プライバシー確保の密閉性
アルミの縦格子をぐるりと回し、通り抜けさせる動線で一気に解決させる。
胸のすくような デザイン だ。
残念なのが、ネットフェンスがグルリと囲んでいて、バリアフリーならぬ
バリアとなってしまっていること。明治通り側から気楽にアクセスしたい。
大きな庇は明治通りに張り出すくらいでもいいかもしれない。
小雨の夕暮れ、公共トイレの前で待ち合わせ‥。なんて、粋じゃないかな。
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残る6ヶ所は、平日の半日をかけて巡りました。
まずは、京王線幡ヶ谷駅から「西原一丁目公園」へ
□西原一丁目公園トイレ 坂倉竹之助
WC-1 小便器:1 大便器:1
WC-2 小便器:1 大便器:1
だれでもWC 大便器:1
公園内にシンプルなボックス形状の中に3つのブースが並ぶ。
内部は半透明の壁面に外の緑が映り込む明るい空間で、居住空間のようだ。
ただ「だれでもWC」以外の2ブースは男女兼用で、小便器と大便器が並ぶ。
便器は合計5器 あるのに 同時使用人数は3人
これは、ちょっと無駄じゃないのか…というのが、第一印象だったのですが
一般的なトイレ整備の目標とされる便器数の充足、待ち時間解消といった
“数”や“時間”という数値とはまた別の魅力を持たせることでみんなが
「利用したいと思う」トイレを創出することが、この敷地では重要と‥
‥という坂倉さんの解説に納得。
ただ(これは、いささか下世話で恐縮ですが‥)男女ふかり同時に入室して
フシダラな使い方をされちゃう、という危惧はないだろうか‥。
昨年詳らかになった「多目的トイレ」での、ある芸人の不謹慎な行為のこと
があります。国交省が「多目的トイレ」「多機能トイレ」という名称やめて
「バリアフリートイレ」にするという報道がありましたが、この事件も起因
しているのかもしれない。公共空間として、相応しい使われ方を望みたい。
今度は、行燈のように明るくなるという夕刻に、あらためて来てみよう。
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新宿駅まで戻り小田急線代々木八幡駅から「代々木深町小公園」へ
□代々木深町小公園トイレ 坂茂
男子WC 小便器:1 大便器:1
女子WC 大便器:1
だれでもWC 大便器:1
これも、公園内にシンプルなボックス形状の中に3つのブースが並びます。
透明なガラス張りで普段は中の便器まで丸見えですが、入室して鍵をすると
ガラスが曇り室内が見えなくなるという仕掛け。近未来的なデザインです。
なるほど、これなら防犯上の問題もなく、みんな綺麗に使ってくれるはず。
ただこの日は、ガラスはずっと曇り状態のまま。
ブース内には「使用の際には必ずカギを!」の貼り紙も。
ある女性芸能人の、完成したばかりのトイレを見聞する動画をYouTubeで
見てみると、やはり、透明のブースで鍵をかけずに用を足す男子がいます。
この女性芸能人さんも、初めて入るのに、些かためらいがある様子でした。
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すこしだけ、歩きます。
「はるのおがわプレイパーク」は「代々木深町小公園」のすぐお隣でした。
子供たちが小屋を建てようと丘の上で大工仕事をしている。楽しそうだな。
ここは自分の責任で自由に遊ぶ公園です。
子どもたちが「やってみたい!」を最大限カタチにするチャンスのある
遊び場です。子どもたちが自由に遊ぶためには「事故は自分の責任」と
いう考えが基本です。
車でよく通る井の頭通り沿に、こんな素敵な公園があるとは知らなかった。
この公園の一角に、色違いで全く同じ形状の公共トイレがあります。
□はるのおがわコミュニティーパークトイレ 坂茂
男子WC 小便器:1 大便器:1
女子WC 大便器:1
だれでもWC 大便器:1
目的の公共トイレに向かっていると「はるのおがわ~」のスタッフの女性が
親しげに話しかけてきたので、いろいろ聞いてみました。
曰く
「はるのおがわコミュニティーパークトイレ」も前記の「代々木深町」同様
ガラスはずっと曇り状態のまま。
それは、電気系統の故障によるところ、と聞いている。
トイレに入る時も、出る時も、恥ずかしがっている人がいた。
夏は、内部が暑くなってたまらない。云々。あまり評判よくありません。
時点では、コンセプト通りには上手くいっていないのかもしれません。
ドア吊元の納まりなど、気になる箇所もがありました(…手に注意の貼り紙)
機械仕掛にしろ、設備機器にしろ「動くものは壊れる。」
建築の造形的手法で挑戦で、坂さんの作品をみたかった。
これからの運用で、どう立て直していくか。注目です。
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残り3ヶ所は、いずれもJR恵比寿駅周辺です。
夕暮れがせまり、急いで巡ることにしました。
これまでのトイレは、プロダクトとしてどんな場所でも成立する形状でした。
恵比寿の3作品は、計画地の形状などに起因した部分があり、より建築的な
発想のように感じました。
□恵比寿公園トイレ<ワンダーウォール> 片山正通
男子WC 小便器:2 大便器:1
女子WC 大便器:2
だれでもWC 大便器:1
恵比寿公園内に、木目を残す型枠材によるコンクリート壁を一見、不規則に
配置し、男子WC、女子WC、だれでもWCへの動線を巧みに整理している。
セレブ感の出る仕上げというイメージでしたが、土着的な厠の雰囲気を上品
に表現することに成功していると思います。してやったりでしょう。
思いのほか、開放感もありました。
□東三丁目公衆トイレ 田村奈穂
男子WC 小便器:3 大便器:1
女子WC 大便器:2
だれでもWC 大便器:1
JR山手線が走る土手法面と公道との細い敷地に、巧みに計画されています。
折り紙をイメージしたとゆう形状と、ビビットな赤い色がアクセントですが
すでに都市の風景の中に馴染んでしまっているようです。風景ってすごい。
唯一、公園空間と絡まず公道から直接アクセスできる公共トイレでしたが、
タクシーの運転手さん達が、ひっきりなしに用を足すため入っていきます。
小便器も肩を寄せ合うよう、ぎりぎり3器。使われがいがありそうです。
□恵比寿東公園トイレ 槇文彦
男子WC 小便器:2 大便器:1
女子WC 大便器:2
だれでもWC 大便器:1
公園内の赤いタコの遊具と対比して イカのトイレ と言われるそうです。
男子WCとその洗面、女子WCとその洗面、そして だれでもWC という
5つのキューブを樹木を取り囲むように配置して、動線・視線を整理する。
有機的な形状の鋼板屋根で連結させて、一体感を出している。
欄間の半透明ガラスは、鋼板屋根と間の隙間で、通気性も確保している。
残念なのは、白い壁面が、雨の返しや足跡で汚れてしまっていることだ。
それでも、やはり胸のすくような巧みなデザインだ。
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駆け足になってしまいました。
公共トイレが、単に用を足す施設から、都市のアイコンになっていました。
維持管理に、ご苦労もあるでしょう。使う側も気をつけて清潔に保ちたい。
これから出来上がる残りの作品も、チェックしていきましょう。